「パパ、こっちこっち!」
6年前、まだ幼稚園年長さんだったころの娘の声が聞こえてきそうです。
今では手を繋ぐことすら嫌がる娘。
思春期に突入しつつ完全にパパ離れになってしまった娘は
明日12歳になります。
次に娘の手をしっかりと握れるのはいつの日になるだろうか。
娘の結婚式の日になるのだろうか。
昨年、私の父が亡くなり、最後に病院に見舞いに行ったとき、数十年ぶりに父の手を握った。
それまで最後に父の手を握ったのはいつの日だったろうか。
おそらく私が小学生のころだったかもしれない。
もうそのときのぬくもりは覚えていないけれど、
父の手は大きくて、ごつごつしていて、でもたしかに温かかった記憶がある。
ひょっとしたら次に娘と手を握るのは、私がそんなときになるのかな。
これから先、何年も、何十年も娘の手を握れなかったとしても、
でも、娘が手を差し伸べたときは、
そのときは、
どんなときでも、いつだって、しっかりと娘の手を握ろうと思う。
この先、救いが必要なとき、先行く道で迷ったとき、
いつだってその手を差し伸べてほしいと思う。
そして、
いつだって一緒に歩いて、
いつだって一緒に走って、
いつだってどんなところへも恐れずに行く。
キミがいつかパパのその手のぬくもりを忘れてしまったとしても、
パパは絶対に忘れない。
「パパ、こっちこっち!」
小さな手でパパの手を引きながら、
一生懸命走るキミの後ろ姿、
精一杯叫ぶキミの声、
指先に感じた小さなぬくもり、
この先もずっと忘れない。